あにいもうと (1976)

心の底では深く愛しあいながらも、互いに傷つけあい生きていく兄と妹の姿を描く、室生犀星の同名小説の3度目の映画化。脚本は水木洋子、監督は今井正、撮影は原一民がそれぞれ担当。

監督:今井正
出演:秋吉久美子、草刈正雄、池上季実子、大和田獏、大滝秀治、下条アトム、蟹江敬三、なべおさみ、伊佐山ひろ子

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あにいもうと (1976)のストーリー

ある夏の暑い日、川べりの家に、街の工場に住み込みで働きに出ていたもん(秋吉久美子)が、妊娠して帰って来た。トラックの運転手をしている兄の伊之吉(草刈正雄)は、あらんかぎりの悪態をついてもんをののしった。かつて川の護岸工事の親方をしていたことを誇りに生きている、今は落ちぶれてしまった父の赤座(大滝秀治)もまた、もんを冷たく突き離した。口ごたえせずに耐えるもんをやさしくかばうのは、母のりき(賀原夏子)と妹のさん(池上季実子)だった。ある日子供を堕ろせ、とつめよる伊之吉に我慢しきれないもんは、りきとさんが止めるのを振り切って家を飛び出した。

以来、もんからの便りはとだえ、伊之吉は毎日のようにもんの写真を持って盛り場を捜し歩いた。その頃、もんはストリップ小屋で売子として暮していたが、些細なことから流産してしまった。ある日、もんを妊娠させた男、小畑が川べりの家を訪ねた。子供は堕ろしてくれたか、とたずねる小畑に赤座はすっかり失望し、もんが流産したことを伝え、家から追い出した。その小畑を伊之吉が帰る途中に掴まえ、殴り、蹴倒し、さんざんな目にあわせた。そして自分がもんを小さいころから可愛いがり、いかに大切な妹であるかを聞かせるのだった。一方、末の妹のさんには互いに好きあっている鯛一という男(大和田獏)がいるのだが、彼が養子のためにひけ目を感じて、親のすすめる縁談を断わりきれず、さんの気持を裏切って結婚することになったのだった。流産してからのもんは水商売の世界を転々とした。派手なパラソル、炎のような髪の色、体の線を強調したドレス、きつい化粧。久しぶりに家に帰って来たもんは、もうどこから見ても商売女だった。

それでも母や妹の前で土産を広げて雑談に興じている時は、昔ながらのもんにかえっていた。そこへ伊之吉が帰って来た。悪態をつく伊之吉を無視していたもんだが、伊之吉が小畑(下条アトム)をさんざんな目にあわせたことを知ると、逆上して食ってかかるのだった。伊之吉は家を飛び出したが、土手を登る彼の頬を涙が伝わっていた。翌日、橋を渡って帰るもんとさんの後から、伊之吉のトラックが追いかけてきた。「バカ! どこへ行くんだ」「バカだけ余計だ」「早く、乗れ!」「乗ってやろう」兄と妹を乗せてトラックが走る。「帰って来るんだぞ! 遠くへ行くなよ……」ハンドルを握りながら、ポツリと言った伊之吉の言葉に、もんの顔が涙でくしゃくしゃになっていった……。

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